1977年。ロボットアニメに刺激されたひとりの少年が空き箱と針金でロボットを作り始めました。これが、カミロボの起源です。彼、安居智博が、プラモデルではなく、わざわざ手作りの紙ロボットを選んだ理由は、意外にも「貧乏」ではありません。「プラスチックでは、ヒト特有のやわらかい動きが表現できない」というこだわりが、彼に紙を選ばせたのです。なかなかあなどれない小学生です。少年はやがてプロレスの魅力と出会い、ロボットをレスラーとして戦わせるカミロボ遊びを生み出しました。ここまでは、よくある話かもしれません。小学生の頃、どのクラスにも、ひとりくらいこんな男の子がいたものです。でも彼がすごかったのは、この遊びをオトナになってもずーっと、やめなかったこと。誰かに見せるわけでもなく、どこかで発表するわけでもなく、27年間、彼はひとり、黙々と遊び続けたのです。 |
人に見せるためではなく、部屋を飾るコレクションでもなく、純粋に「戦わせる」という極私的ニーズを満たすために生まれたカタチは機能的で誰に媚びることもありません。27年という歳月の間につくられ続けたレスラーは200体以上。カミロボという様式を確立する以前のロボットも含めるとその数は軽く400体を超え、すべてが奇跡的に保存されています。この膨大なコレクションを、2001年のある日、あるアートディレクターが偶然に「発見」したことで、カミロボを取り巻く状況は一変しました。「これぞクリエイティブだ!」と確信した彼・青木克憲は、本業そっちのけでカミロボにはまり、いろんな場所でその魅力を語りはじめました。カミロボは、次第にネットや雑誌、テレビなどでも取り上げられるようになり、徐々に人気が拡大。ついに今回の「カミロボ博」が開催されることになったのです。 |
カミロボがおもしろいのは、その造形のユニークさもさることながら、そこに27年間という歳月に培われた物語があるという点です。まずロボットレスラーひとりひとりに人格があり、異なる運動神経があり、所属する団体があります(詳細はぜひ「カミロボ博」でご覧ください)。そして彼らは年をとります。戦いを繰り返すうちに、傷つき、壊れ、修理を繰り返しても、いつか動けなくなる日が来るのです。まるで人間のアスリートのように。そんなエモーショナルな部分も、カミロボの魅力のひとつなのかもしれません。でも、それだけでは説明しきれないなにかが、いい年をした大人を夢中にさせるなにかが、カミロボにはあるのです。安居智博に、27年間ひたすらカミロボを作り続けさせた原動力とはなにか?アートディレクターの青木克憲をのめり込ませた引力とはなにか?こたえは、あなたが会場で見つけてください。 |